9.マルチ電極の考え方
放電加工の対象となる複数の加工部に対して、同時に加工するために電極を一体化したものをマルチ電極と呼びます。
マルチ電極を考える要素は次の点が挙げられます。
- 複数の同じ形状の加工部であり、加工精度や仕上面あらさを均一にしたい。
- 電極本数を削減し、段取り時間を短縮したい。
1)電極のマルチ化が有利な点
(1)各加工部で同じ加工精度や仕上面あらさが得られる。
図1のように、同一形状の複数加工部で均一な加工精度や仕上げ面あらさを得ることは難しく、調整のための作業時間が長くなりますが、電極をマルチ化することで容易になります。
(2)電極本数を削減し、段取り時間を短くできる。
段取り時間は、電極本数に比例して長くなるため、マルチ電極は段取り時間の大幅な短縮につながります。
(3)荒加工速度を速くできる。
図2のように、加工部面積を適度に大きくすることにより、電流値の高い荒加工条件が使用できるため、荒加工時間を短縮できる場合があります。特に電極材質がグラファイトの場合は、小さい加工部面積に制限されて加工条件を低減させる必要があり、マルチ化の効果が増大する場合があります。
2)電極のマルチ化が不利な点
(1)加工部の面積が大きくなると、加工精度の低下や仕上面あらさが悪化する。
項目8「分割の考え方」の図2、3で記載したように、加工部の面積が大きくなると、加工精度の低下や仕上面あらさが悪化するため、必要以上に電極をマルチ化することは避けなければなりません。